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急性肺炎

急性肺炎(acute pneumonia)


当サイトでは、犬の病気のなかで、とくにウルフハウンドについて注意しなくてはならないものをとりあげています。病気にかかった時の参考や病気の予防、早期の対応に役立てていただければと思います。
 
病気についての記述はあくまで典型的な症状や経過、治療について書いたものです。症状や経過には個体差があります。飼い主の自己判断は大変危険ですので、病気の兆候がみられたら、すぐに獣医師の診察を受けてください。


肺炎はウイルス、細菌、真菌、寄生虫、誤嚥など様々な原因によって引き起こされる肺の炎症です。肺炎で最も一般的なのは、仔犬に多い「ケンネルコフ」と言われるウイルス性の肺炎や細菌性の肺炎ですが、これらはごく幼齢期の仔犬を除いて致死的になることは稀です。

これに対してウルフハウンドでは、仔犬だけでなく成犬でも、重度の肺炎を起こしやすい傾向があります。

ウルフハウンドの急性肺炎は成犬でも発症し、しばしば急性の経過をたどり致死的となることがあります。一般的な肺炎の症状や経過とは異なるために、獣医師による誤診や判断の遅れも生じやすく、注意が必要です。

以下では、ウルフハウンドに特徴的な劇症型の急性肺炎について書いています。


<原因>

はっきりした原因がなく、突然発症することが多いとされています。一度肺炎を発症した犬は、慢性的に再発を繰り返すことがあります。

ショーやイベント後にケンネルコフにかかった後、細菌性肺炎へ移行することもあるので、気をつけてください。


<症状>

発症して数時間は、頭部と首を伸ばす、横になって寝たがらない、食欲不振、元気がない、呼吸が苦しそうなど、あいまいな症状しかなく、咳や高熱といった一般的な肺炎の症状は示さない場合もあります。また、肺のレントゲン写真でも異常なしとされることもありますが、この段階で強力な治療を開始しないと手遅れになることがあります。

はっきりしない症状が出始めてから数時間のうちに状態が劇的に悪化することがあり、注意が必要です。肺炎が悪化すると発熱、呼吸困難、咳などが生じ、立てなくなります。飼い主が異変に気づいてから24時間以内に死亡することも稀ではありません。

ウルフハウンドの急性肺炎では、一刻も早く症状に気がつき治療開始することが何よりも重要です。早く気がつくためには、普段の犬の様子をよく把握しておくことも大切です。下記のチェックポイントを参考に、明らかに普段と様子が違う、呼吸がおかしいといったことに気がついたら、すぐに動物病院で診察を受けてください。


<肺炎の初期症状チェックポイント>
・突然発症する
・呼吸が苦しそう
・頭を下げ気味にし首を伸ばす(呼吸を楽にしようとする動作)
・横になって寝ない、伏せたがらない

咳、発熱、レントゲン画像上の肺の炎症は必ずしも伴わない場合があるので注意:
・咳をすることもあるが、しない場合もある
・熱(高熱)が出ることもあるが、平熱の場合もある
・レントゲン写真では肺に異常がみられない場合もある

肺炎発症直後のウルフハウンド(画像):首を伸ばし、目に力がなく虚ろ、寝たがらない(伏せても横にはなれない)、呼吸が苦しく、熱は40.2度あった。


首を伸ばす特徴的なしぐさを見せる犬:


<治療>

数時間で劇的に悪化するため、一刻も早く治療を開始する必要があります。また、再発もしやすいため、治療には注意が必要です。獣医師向けの「アイリッシュ・ウルフハウンドの急性肺炎:診断と治療」(プリントして病院にご持参ください)および「症例報告」もあわせてご覧ください。

治療は早期に積極的に行う必要があります。当初はセフェム系など強力な抗生剤を注射で用い、ネブライジング(吸入治療)、点滴などを併用します。

再発しやすく、慢性化すると治療困難なため、抗生物質は2~3ヶ月もしくは症状が無くなってから最低4週間程度は続けるよう推奨されています。


【参考文献】
・Irish Wolfhound Health Group "pneumonia" http://www.iwhealthgroup.co.uk/pneumonia.html