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獣医師向け「アイリッシュ・ウルフハウンドの急性肺炎:診断と治療」


ウルフハウンドの急性肺炎は急激に重症化し、半日〜1日で死に至ることもある。一般的な犬の肺炎とは症状の進行が異なる。獣医師の判断の遅れ・誤り(心臓疾患との見誤りなど)により命を落とす例が非常に多い。早期に強力な治療をすることが鍵となる。


<症状・診断>

ウルフハウンドの急性肺炎は、ほとんど症状が出ないまま進行していることが多い。そのため早期に獣医師の診察を受けても、誤診(心臓病との見誤りが多い)や重症度の見誤りが多い。しかし早期に治療を開始しないと、最初に異変を感じてから数時間で急激に悪化し、手遅れとなることがある。

いつもほど元気がない、疲れやすい、食欲が若干落ちている、頭をあまり上げない、目に力がない、飼い主のそばにいたがる、呼吸がやや苦しそう、微熱がある。この程度でも、あきらかに普段と違う様子を感じたら、肺炎を疑う。

伏せたがらない、横になって寝ない、立った状態で首を伸ばし頭部を前に出す姿勢をとる(気道を確保し呼吸を楽にしようとする姿勢)といった行動もよくみられる。

高熱を出すことが多いが、平熱の場合もあるので注意が必要。

初期には、レントゲンでも肺に異常が見られず、咳もしないことが多い。

心臓病など他の病気の可能性が除外されたら、すぐに急性肺炎の積極的治療を開始する。

この犬種には、肺炎の急激な重症化・死亡例が多いため、肺炎が疑わしい場合には絶対に”様子見”はしない。

発症から24〜36時間以内に症状の改善が見られない場合は、死亡のリスクが極めて高い。


<治療>

早期に第3世代セフェム系の抗生剤の注射をするのが有効。治療薬としては、エクセネルがとくに推奨される(治療効果および再発防止効果が高い)。※下記投薬例を参考にしてください。

ネブライザー、酸素吸入、点滴を併用する。

とくに入院の場合、ごく軽い運動をさせる(負担にならない程度に体を動かす)。

再発しやすいため、投薬は最低6週間程度は継続する。


<治療薬>

エクセネルとアンチローブの組み合わせが非常に効果的である。バイトリル、ロセフィンなども一般的だが、ウルフハウンドの肺炎ではとくにエクセネルが有効で、再発防止効果も高く、また副作用がないと言われています。

以下は、イギリスのIrish Wolfhound Health Group(Irish Wolfhound Club, Irish Wolfhound Society, Irish Wolfhound Club of Northern Ireland, Irish Wolfhound Club of Scotlandの4団体で構成)およびアメリカのIrish Wolfhound Foundation (Irish Wolfhound Club of Americaの調査研究団体)が公開している、ウルフハウンドに有効とされる肺炎の投薬例です。

いずれの場合も、すぐに効果が表れない場合には、薬を追加するか変更することを検討してください。

投薬例)
・エクセネル:皮下注射または筋肉内注射で、 2.2~4.4mg/kg/日を6週間続ける。アンチローブと併用。

・ロセフィン:1g/頭(15~50mg/kg、標準量25mg/kg)を希釈して筋肉内注射、もしくは静脈注射。12時間ごと、4~14日。1日目は2g、2日目以降1g/日。その後ゼナキル体重量を6週間継続。

・バイトリルまたはゼナキル:通常量1日2回+クリンダマイシン600mg以上(10mg/kg)、1日2回。このセットを4週続けてクリンダマイシンを切り、バイトリル(またはゼナキル)は3ヶ月続ける。
 注)バイトリルは生後1年半以下の仔犬には禁忌。

・バイトリル+アンチローブ:3週間継続

・ジスロマック:500mg/日、最低7日継続

・ロセフィンまたはセフチオフル+シプロフロキサシン

慢性肺炎の場合の投薬例)
・セファレキシン(22−30mg/kg、1日2回)を、次に肺炎を起こすまで続ける。その後はジスロマック(5-10mg/kg、初日は5mg/kgで2日目以降10mg/kgに増量)、症状がなくなってから5日間は10mg/kgの投薬を続ける。


【参考ウェブサイト】
・Irish Wolfhound Health Group: "Pneumonia"
・Irish Wolfhound Foundation: "Pneumonia: What you need to know"