INDEX

■■■Health issues   病気・治療・健康診断 犬種に多い病気   ・ 胃捻転胃拡張症候群(GDV)   <緊急> ・ 心臓病/ 拡張型心筋症  ・ 骨肉腫 ・ 急性肺炎    <緊急>    獣医師向け「ウルフハウンドの急性肺炎:診...

リンパ腫

リンパ腫(リンパ肉腫)(Lymphoma, Lymphosarcoma; LSA)

当サイトでは、犬の病気のなかで、とくにウルフハウンドについて注意しなくてはならないものをとりあげています。病気にかかった時の参考や病気の予防、早期の対応に役立てていただければと思います。
 
病気についての記述はあくまで典型的な症状や経過、治療について書いたものです。症状や経過には個体差があります。飼い主の自己判断は大変危険ですので、病気の兆候がみられたら、すぐに獣医師の診察を受けてください。

リンパ腫はリンパ球と呼ばれる白血球の一種が腫瘍化する悪性腫瘍で、リンパ節、消化器、胸部など全身に発生します。犬の最も一般的な腫瘍の1つで、ウルフハウンドでも骨肉腫についで発生が多く、悪性腫瘍による死因の15.7%、全死因の5.3%がリンパ腫であったという調査があります。

犬種によって発生率に差があることから遺伝素因があるとされていますが、遺伝以外の要因も関連すると考えられています。中~高齢犬に多くみられます。

リンパ腫は、発生部位により4つの型に分けられます。
①多中心型:全身のリンパ節から発生し、脾臓、肝臓、骨髄を侵す
②縦隔型:縦隔リンパ節から発生する
③消化管型:胃、あるいは腸、消化管リンパ節に発生
④節外型:上記以外の様々な器官、組織(腎臓、神経、眼、皮膚)が侵される

犬に多いのは多中心型で、リンパ腫のおよそ8割がこのタイプです。


<症状>

型により、あるいは進行程度によって様々な症状がみられます。

多中心型の場合は、顎の下や肩、膝の裏などの全身の体表リンパ節が腫れてきます。また、縦隔型の場合は呼吸困難や咳、消化管に発生した場合は嘔吐や下痢を繰り返して体重が減るなどの症状があげられ ます。しかし、内臓にできた場合は症状が曖昧なことも多く、進行して貧血などを伴った状態で初めて発見されることも稀ではありません。

治療しない場合の余命は平均1~2ヶ月で、様々な臓器に転移して徐々に衰弱していきます。


<診断>

細胞診もしくは組織検査、遺伝子検査で診断します。

同時に血液検査、レントゲン、超音波検査、尿検査などで全身の状態、転移の有無などを確認します。


<治療>

治療方法は化学療法(いわゆる抗癌剤治療)が中心で、例外的なケースを除いて手術は行ないません。

抗癌剤治療には様々なバリエーションがありますが、リンパ腫は抗癌剤への反応が良いことで知られ、 多くの場合抗癌剤でがん細胞を叩きながら生活の質を維持していくことができます。しかし、抗癌剤によって癌を完治させられる可能性は非常に低く、ごく少数の腫瘍細胞は残ってしまいます。目に見える、あるいは検査でわかるがん細胞がなくなった状態を寛解といいますが、一度寛解してもいずれはリンパ腫が再燃し、再度化学療法が必要になります。

完治は困難なため、普段の生活に影響が出ないように延命することが治療の目的となります。

おおよその目安として、抗癌剤治療(化学療法)を行った場合の平均余命は8ヵ月、2年間生存する割合は25%とされています。