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線維軟骨塞栓症(FCE)


線維軟骨塞栓症(Fibrocartilaginous Emboli ; FCE)

別名:脊髄梗塞(Spinal Cord Infarction)



当サイトでは、犬の病気のなかで、とくにウルフハウンドについて注意しなくてはならないものをとりあげています。病気にかかった時の参考や病気の予防、早期の対応に役立てていただければと思います。
 
病気についての記述はあくまで典型的な症状や経過、治療について書いたものです。症状や経過には個体差があります。飼い主の自己判断は大変危険ですので、病気の兆候がみられたら、すぐに獣医師の診察を受けてください。

脊髄の梗塞により急性(2~6時間)に四肢の麻痺が進む病気です。多くの犬種では中年齢で発生することが多い病気ですが、アイリッシュ・ウルフハウンドでの発症は非常に早く、生後6~16週の仔犬に多く発生します。

現在のところ、この病気には遺伝性はないようだと考えられていますが、ウルフハウンドには幼齢のうちに発症しやすい傾向があります。FCEが疑われる症状に気がついたら、すぐに獣医師の診察を受けてください。


<原因>

繊維軟骨塞栓症(FCE)は脊髄梗塞とも呼ばれ、線維軟骨性の組織が脊髄内の血管に詰まって発症します。この組織は、髄核と呼ばれる椎間板の中心にある組織に類似しているため、これが塞栓を起こすとも考えられていますが、どのようにして血管に侵入するのかは分かっていません。

塞栓症とは「血流に乗って運ばれた固体や気体によって血管がつまること」を意味します。血管が詰まると、その血管から血液とともに酸素や栄養を供給されていた細胞が死に、これを「梗塞」といいます。「心筋梗塞」も同じ原理です。




<症状>

症状だけでFCEと診断することはできませんが、典型的な症状は以下のようなものです。
活発で正常な仔犬が、激しい運動や外傷の後、あるいはまったくきっかけなく発症し、急に立ち上がることができなくなります。立たせても歩くことはできず、座り込んでしまいます。
発症から2~3時間は症状が悪化し、初期には痛みを示すこともありますが、痛みは数時間でおさまり、麻痺だけが残ります。麻痺は足1本だけの場合もあれば、片側だけの場合、あるいは四つ足全ての場合もあります。重症の場合は呼吸にも変化が見られます。


<診断>

若齢の仔犬に、急性でありながら非進行性で、痛みがない四肢の麻痺が認められた場合、FCEが疑われます。しかし、似た症状をおこす病気は他にもあるため、触診による神経検査や、麻酔下で行う脊髄造影、MRI検査などによって他の病気がないことを確認する必要があります。



<治療>

最も重要なのは、発症から24時間以内に静脈から強力なステロイド剤の点滴注射をすることです。FCEに限らず、神経を損傷した場合、損傷を受けてから治療を行うまでの時間が非常に重要です。発症してから治療するまでの時間は短ければ短いほどよく、24時間を越えると治療の効果は非常に出にくくなります。この際に、必要があれば抗生物質も用います。



<予後>

診断後、ほとんどの犬は24~36時間以内に安定した状態になります。その後、2~3週間以内に順調な回復が見られなければ、その後の充分な機能回復は難しいでしょう。

FCEにかかった仔犬の大半は、中程度のケアを要しつつ、幸福に痛みのない生活が送れる程度の活動性を取り戻すことができます。運動機能の回復と維持のためには、マッサージや鍼治療、カイロプラクティクス、水泳などを取り入れるとよいでしょう。

神経に永続的な障害が残ってしまった場合は、完全な回復は望めなくなります。麻痺が下半身から頭に向かって進行する兆候があれば、非常に深刻です。不幸にして塞栓症が多発していたり、脊椎の上部に起こった場合、死亡するケースもあります。